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懐かしい場所

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今日は夕方から友達とゴハンを食べに出掛けた。
平尾方面へ車を走らせ、じんわりと暮れゆく夕日をながめてると
ふと、あるところへ行ってみたくなり、ハンドルを切ってもらった。



気持ちの整理はもうとっくについていたし、
これまでもそこへ行けない理由はなにもなかったのだけど、
この八年間、そこへたち寄ることはしなかった。





そこには昔、心から助けたいと思った人がいた。

その人を助けるために、強くなろうと思った。
強くなることを自分に強いることで、
大切な人を助けることができると、信じていた。

強くなろう、強くなろう

そうやって、何度も何度も弱音を呑み込むうちに
いつのまにか、何も言えなくなった。

そして最後は
ただ黙って、その人から離れることしかできなかった。




それから八年の歳月が経ち、わたしは
苦しいときは苦しいと、ちゃんと言えるようになった。


助けて欲しい。

そう言えることが本当の強さなのだと、
いまならばわかる。






枇杷の木の下で、
その人は、八年前と変わらずそこにいた。

病気をしたとかで、ずいぶん痩せていたけれど、
昔と変わらない声で、わたしの名を呼んでくれた。



八年前、命がけでつくりあげた小さな食堂。

カウンター越しに、その人の夢の話しを聞くのが好きだった。
でも、同時にその人のようにがんばれていない自分を思い知らされ、
落ち込んでばかりの日々でもあった。
いつだったか、そんな行き場のない思いがあふれでて、
そこで、一度だけ泣いたことがあった。
そんな自分が情けなくて、いやでいやでしょうがなかった。
いま思い返しても、苦しいことばかりだった。
不器用な人で、優しい言葉ひとつかけてもらえなかった。
でも、その人の存在がこそが、わたしの大きな励みであった。



八年ぶりに、たぶんお互い話したいことはあったと思うけど、
あの頃からは、もうずいぶん遠くにきてしまった。
その人がカウンター越しに話しかけてくることはなかったし、
わたしも、いまのわたしを語るつもりはなかった。

ただ、当時もそうだったように、
わたしの好きだった曲をずっとかけていてくれた。






人は変わる。

わたしも変わったし、
これからも変わってゆくのだろう。


助けて欲しいと、
ときに弱音を吐きながら、強く。


それでいい。
by cotomono | 2009-03-16 01:30
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