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エンディングに添えて

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 時間とは、いのちなのです。
 そして、いのちは心の中に宿っているのです。
 そして、人間がそれを節約しようとすればするほど、
 ますます、いのちはやせ細っていくのです。

 〜

 モモはジジの力になりたい気持ちで、いっぱいでした。
 そうしたくて、心がうずくほどでした。
 けれどモモは、いまジジが言ったようにしてはいけないと感じました。
 ジジは、またもとのジジにならなくてはいけないのです。
 でももし、モモがモモでなくなってしまったら、
 その彼の力になってあげることなどできません。
 彼女の目にも涙があふれました。
 彼女は首をよこにふりました。

               ミヒャエル・エンデ『モモ』






数年ぶりに「モモ」を読み返している。

初めて読んだのは小学校高学年で、図書館でなんとなく手にしたものの、
どうしても読み進めることができずに途中で断念したのを覚えている。
それから十数年後、モモのことなんてすっかり忘れていた頃、たまたま本屋さんで
オレンジのハードカバーが目に飛び込んできて、思わずジャケ買いしたのが
モモとの本当の出会いだった。


小学生の頃、モモをうまく読めなかったわけが大人になったいまならよくわかる。
灰色の男とか、時間どろぼうとか、子どもではわかりえない、この世界を覆っている
ものの存在をリアルに感じる大人だからこそ、モモの云っていることがわかるのだ。







今年の春頃から夏にかけて、うまく言葉がでてこない状態が続いていた。

ほんとうのことはいつも心の奥にあるのだけど、それが浮かび上がってこない。
というか、浮かび上がってくるのを自分で押しとどめようと心に蓋をしていた。

ほんとうのことを口にすれば、もうここにはいられなくなるのを、
どこかでわかっていたからだろう。


   
  「どっち(の生き方)がいいんだろうね」と誰かは言ったけど...

  何かと天秤にかけられるほど、ただ生きてゆくことは容易くないし、
  わたしにとって生きていることは、もっと切実だから。
  そして、切実でない人間に、ものはつくれないから。




そうして、だんだんと自分が薄まってゆくのを感じながら、
「おしまいのとき」が、もうすぐそばまできていたのだ。




ほんとうにものごとが動くときは、自分の想いとか願いとか、
そういうものを超えたところでそれは起きてしまう。

10年前、はじまりのときがそうであったように、
おしまいのときもまた、目には見えない力が動いた。


それは人と人とのあいだを流れる風のような、
自然の「揺らぎ」のようなもので。

そんな不確かなものであっても、人間も生きものであるが故、
自然の摂理には逆らえないように、誰何が悪いわけでもなく、
それはただ、受け入れるほかないのだ。

そして、それを受け入れたことで、消えかかっていた
いのちのスイッチがふたたび入ったことは、確かなことだから。




思えばこの1年は、長いエンディングの中にあったのかもしれない。

うまく言葉がでてこなくなっていたのも、
だんだんと「おしまい」に近づいていたから。


大人になるということは、傷を負っていくことなんだなぁ...とぼんやり
考えていたら、ある人に「だからこそ、人は磨かれるのですよ」と云われた。

たしかに、ガラスだってなんだって傷を付けながら磨いてゆくし、
傷がないことには、磨くこともやらないだろう。

これから先、人生のおしまいのときがくるまで、
あとどれくらい傷を負うのかなぁ...と、途方もなくなっちゃうけど。

傷ついたり傷つけたりを本気で出来ない関係なんて、やっぱりつまらないし、
そのぶん、磨かれると思えば、まぁ、そういうのも悪くない(笑
おしまいの頃にはピカピカになってるといいけど。。。



とにもかくにも、まだまだ路半ば。
すべては始まり、終わるころには。と、くるりも歌ってるしねー

いまはさながらエンドロールを眺めるように、
この10年間のひとつひとつを思い返している。

傷つけたり傷ついたり、泣いたり笑ったり、喜怒哀楽、
まぁこもごもとあったけど、どの瞬間も真剣であったし、
だからこそ愛おしく、本当に本当に素晴らしい10年であった。


生きることは、まこと、おもしろきことかな。
これからも手を抜かず、やっていこう。


長くなりましたが、エンディングに添えて。

ありがとう、
ありがとう。
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by cotomono | 2013-10-29 23:28 | Comments(0)

深くてあたたかい。知的好奇心、くまもと。

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くまもと、はじまりましたー。
というわけで昨日は早起きして熊本は「orange」さんへ。
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高速バスがやや渋滞してオープンの時間が迫るなか、あわわ〜...と内心焦りつつ
屋根裏でごそごそ搬入作業をしていると、店主の田尻さんがおもむろに
「いまむらさん、コルチャック先生すきでしょ」と一冊の文庫本を手渡して
下さった。なにやら廃校になる高校の図書館で働いている先生からいっぱい
本を頂いたらしく、わたしの分も?とっておいてくださったのだ。
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コルチャック先生とは、ナチスドイツ統治下のワルシャワゲットーで、
ユダヤ人孤児の孤児院を運営しながら、最期まで子ども達と運命をともにした方で
(詳しくはwikiを...

去年の展示会中に、コルチャック先生と子ども達のことをモチーフにした
「ブルムカの日記」という絵本を一冊、贈り物に買ったのを田尻さんが覚えて
下さってたようで、、、じーんとうれしかった。。。

その絵本には、「その先」のことは敢えて描かれていないのだけど、
今回の展示会中はこれを読みながらコルチャック先生と彼らが生きた時代の
ことを知り深めたいと思う。

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オープン時間ぎりぎりまでかかって、なんとか「かばん屋」さんができたので、
下で腹ごしらえしようと屋根裏を降りたら、テーブル席でひとり珈琲を呑んである
ご老人とぱっと目が合った。

なんとなく雰囲気のある方だなぁ...と、カウンターで熱々のカレードリアをパク
ついていると、そのご老人が、「凸凹舎」(活版)の便箋と封筒セットを手にし、
レジでお支払いをしてあるではないか。。。凸凹舎の紙類はわたしも大好きなので、
なんて素敵なお爺さまだろう...と内心ときめいていた(笑

素敵な方ですね..と、あとで田尻さんに聞いてみたら、
「知らない?あの人が渡辺京二さんだよ」とのこと。

すみません...不勉強でわたしは存じ上げていなかったのだけど、田尻さん曰く、
苦海浄土の石牟礼道子さんとは同志の仲だそうで、渡辺さんの最新作である
『もうひとつのこの世 石牟礼道子の宇宙』を読むと、石牟礼さんの
苦海浄土をもう一度読み直したくなるのよ〜。とのことで...

わたしも店番そっちのけで(お客さんが来たら呼んでもらうことにして、、、
お隣の橙書店で本の渦にしばし埋れていた。。。

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そんなこんなで、熊本初日はあっという間に過ぎてゆき、
夜7時の高速バスで博多に帰ろうと思っていたら...
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なんと同郷のスタア☆「とんちピクルス」さんの投げ銭ライブが始まるというので、
これは見逃せないと(笑)、選りすぐりのとんちファンのみなさんと一緒に
笑いあり涙ありのウクレレの音に酔いしれておりました。

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で、かばん屋さんの方はスロースタートでしたが、、、
わざわざDMを持ってきて下さり、フィリピンのことにも耳を傾けてくださった
地元の方や、一昨年、神楽坂に来て下さった東京のお客様が偶然お立寄り下さったりと、いい時間を過ごさせて頂きました。

11/2(土).4(月祝)も在廊しますので、
美味しい珈琲と素晴らしい本達とともにお待ちしております。


熊本は深くて、あたたかい。
知的好奇心、くまもと。

やっぱり、大好きな場所です。
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by cotomono | 2013-10-27 20:01 | Comments(0)

onsitu

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展示会、始まりましたー。
というわけで、週末は白いかもめに乗って佐賀の「ぱはぷす」へ。

佐賀は、空がほっっんとーに広くて、空気が澄んでて、
人が素直で、ごはんが旨くて安くて、大好きな町です。

都市と違って大きな力が及ばない分、小さなものの蠢きが感じられる
不思議な安堵感があるのです。

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正直、町(商業)はかつての賑わいを失いつつありますが、
それでも人(文化)はきちんと生きている。

それは、かつて「七賢人」を輩出した土壌と「葉隠」に通じる教えが、
時代は変わっても、変わらぬアイデンティティとして
佐賀人に、ちゃんと受け継がれているからだと思います。

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さて、ここにも次の時代を担い始めた若者たちが
にやにやしながら、何やら蠢いていますよー。

そう、

「かくめい」は泣きながらすんじゃなくて、
笑いながらやんだよー。 ってことで...


できたてほやほやだそうですが...
onsitu

on situ (ation) = 「その場で」という意味と、読んで字のごとく「温室」
ようやくすると、“あったかいその場所で” って、ことかな(笑


19(土)20(日)も、あったかいその場所で
お待ちしておりますー。
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by cotomono | 2013-10-15 18:22 | Comments(0)

トリツカレテイル男子

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昨夜は、いしいしんじの「トリツカレ男」...ではなく、
トリツカレテイル男子たちの宴に、おおいに酔いしれた。

ザッハトルテRue de Valseのスペシャルなライブ!

ザッハトルテは東北を旅しているとき、Hくんに聴かせてもらってからというもの
ひさびさに、どハマリしてもっぱら針仕事のBGMに。
アコーディオンの新井さんは、まだバンド編成じゃない頃にお世話になっている方の
結婚式で初めてその音色を聴いて以来だから、ずいぶんお久しぶり。で、ものすごく
色っぽく磨きがかかっててびっくり。。。

ザッハトルテはCDで聴いてるぶんには、心地良くてふふふ〜ん♪としてるんだけど、
生音はものすごいど迫力とエンターテイメントに徹したパフォーマンスで、
いっきにタマシイ抜かれてしまった。。

なんというか、音楽が好きとか音楽に愛されているとか、そういう次元じゃなく、
完全にトリツカレテしまったんだなー、この人たち。ていう世界。
いやぁ狂ってますね、最高!(笑


わたしの拙い言葉では伝えきれないのでこれはぜひライブで体感してもらいたい。

最近はもっぱらラジオのクラシックやジャズで満足してて、
ライブから離れていたけど、やっぱり生の音楽ってスバラシイ。
またライブに行きたいし、トリツカレテイル男子たちにもまた会いたいな(笑





さて、先月末に参加させて頂いた「悠遊」さんの企画展。
3日間だけでしたが、本当に素晴らしい時間を過ごさせて頂きました。

企画展に参加すること自体が初めてのことで。
それもご一緒する作家さんたちが皆さんわたしより年齢もキャリアも上の方で、
お話を頂いたときは、正直、わたしでは役不足なのではと不安に思いましたが、
悠遊さんのさすがの「大人力」に胸を貸していただき、数字も出していただき、
すっかり甘えさせて頂きました。。。

いつも、同世代か少し下の方とご一緒することばかりなので、
もちろん、それはそれで楽しく刺激になるのですが...

悠遊さんのお客様や、お付き合いのある作家さんたちは
やはり、人生の山をひとやまもふたやまも越えて来られた方々なので、
すごく勉強になりましたし、年齢を重ねるって本当に素敵なことなんだなと
素直に思えました。

そして、ものづくりの10年は、まだまだ、ウォーミングアップ
基礎体力づくりに過ぎないんだなぁ...と思い知らされました。




偉大すぎてもはや比べられる次元ではないけども、、、
あのルーシー・リーでさえも本当の意味で表舞台に上がったのは
60代だというもの。

わたしは作家としてのスタートも遅ければ、進みもノロノロだから
なおさらのこと。

もうほんと、わたしなんてまだまだひよっこちゃんだ。





そんなひよっこの展示会が、いよいよ今週末(13日)から佐賀で始まります。
あと5日で、小物3点と手染めの大物1点を仕上げるというなかなかハードな
スケジュールですが、めげずになげずにやり切る所存です。。

あ、朝日新聞の10日の朝刊に展示会の告知が小さく掲載されるそうなので
愛読されている方は探してみてください。
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by cotomono | 2013-10-07 23:33 | Comments(0)