人気ブログランキング | 話題のタグを見る

たかが、

たかが、_a0072072_1743066.jpg

朝から、個展用としてはラスト3つめにあたる新作に取りかかる。
リネンやコットンといった使い慣れた素材ではなく、
まったく初めての素材を使って、まったく新しいカバンをつくる。


スケッチをもとに手を動かしてゆく。
でも、実際はスケッチのようにはいかない。
鉛筆のようなラフなラインはどこにも存在しないし、
そこに雰囲気やニュアンスを出そうとすれば、
細部をきちんと作り込まないとそれは表現できない。
なんとなくを作りたければ、なんとなくなどできない。

その、なんとなくを表現できるようになるまでに、
いったいどれくらいかかるのだろうか...
今日もまた、細部のつくりに手こずり力のなさを痛感する。
こうしたい画はみえているのに、いったいぜんたい、
どうしたらいいのかわからない。

はぁぁぁぁ、、、、、、、


脳みそが耳からでてきそうになって、もう限界。
いったん手を休め、気分転換にチキンカレーを作る。
野菜を刻み、肉を炒め、ルーを入れてぐつぐつ...

そして、ぐつぐつしながら思うのだ。



「たかが、カバンなのに」


むかし、親に言われたことを思い出す。

それで家族を養っているわけでもなければ、
公的な資格があるわけでもなく、将来の保証だってない。
いつそれをやめったて、誰も困らない。
なにをそんなに熱を上げているの?


「たかが、カバンなのに」


そうだ。
たかが、カバンを作っているだけなのだ。

それで、世界の貧困がなくなるわけでもなければ、
誰かの自殺を思いとどまらせることもできない。


でも。


その、たかがをやらなければ、

わたしは、
わたしになることすらできなかった。




魂ぐらい、傾けよう。


たかが、
カバンを作っているだけなのだから。





It's only my time
by cotomono | 2009-10-31 19:13
<< 深く、深く、 ほんとうの物語は >>