朝から、個展用としてはラスト3つめにあたる新作に取りかかる。
リネンやコットンといった使い慣れた素材ではなく、
まったく初めての素材を使って、まったく新しいカバンをつくる。
スケッチをもとに手を動かしてゆく。
でも、実際はスケッチのようにはいかない。
鉛筆のようなラフなラインはどこにも存在しないし、
そこに雰囲気やニュアンスを出そうとすれば、
細部をきちんと作り込まないとそれは表現できない。
なんとなくを作りたければ、なんとなくなどできない。
その、なんとなくを表現できるようになるまでに、
いったいどれくらいかかるのだろうか...
今日もまた、細部のつくりに手こずり力のなさを痛感する。
こうしたい画はみえているのに、いったいぜんたい、
どうしたらいいのかわからない。
はぁぁぁぁ、、、、、、、
脳みそが耳からでてきそうになって、もう限界。
いったん手を休め、気分転換にチキンカレーを作る。
野菜を刻み、肉を炒め、ルーを入れてぐつぐつ...
そして、ぐつぐつしながら思うのだ。
「たかが、カバンなのに」
むかし、親に言われたことを思い出す。
それで家族を養っているわけでもなければ、
公的な資格があるわけでもなく、将来の保証だってない。
いつそれをやめったて、誰も困らない。
なにをそんなに熱を上げているの?
「たかが、カバンなのに」
そうだ。
たかが、カバンを作っているだけなのだ。
それで、世界の貧困がなくなるわけでもなければ、
誰かの自殺を思いとどまらせることもできない。
でも。
その、たかがをやらなければ、
わたしは、
わたしになることすらできなかった。
魂ぐらい、傾けよう。
たかが、
カバンを作っているだけなのだから。
It's only my time