きのうの夕暮れ時、
矢野さん家族が木のスツールを届けてくれた。
このスツールに出会った日は、
大きな哀しみと混乱のなかにあって
こみあげてくる涙に呑み込まれそうだった。
ゆっくりしていけばいいよ
何も聞かずに迎えてくれた
矢野さん家族と木の作品たち。
導かれるように腰掛けた木のスツールは
朽ちているようで、生きているようで
手にふれると、あふれでる痛みを吸い取ってくれた。
まるで、安らかな眠りに誘われるようだった。
ずっと、一緒にいたいなぁ...
矢野さんに気持ちを伝えると、この木の話をしてくれた。
黒木町にある小さな神社
雷に打たれ、朽ち落ちた一本のくすのきが
神社のすぐ下を流れる清流に横たわっていたそうだ。
雷のもともとの語源は「神在」
そして、神社の御神木となれるのは、
雷に打たれた木だけであるという。
神在る木
そんな、神様が宿るくすのきは
矢野さんの手を介し、新たな命を宿した。
いま、この木のスツールはわたしの傍らにあって、
ときどき腰掛けてみたり、もたれかかったりして
わたしを癒してくれる。
くすのきの香りがする...
自分の分身のようでいて
とても気持ちがいい。