さて、展示会用の制作まっただ中ではありますが、 ある方に教えていただいた「ホロン革命」を読了。 目次をみて、これはきっと面白い!と直感でAmazonで古本をポチリましたが、 さすがにちょっと難解でページをめくる手が重くもなりましたが、自分がなんとなく 感じていることが要所要所で言語化してあり、あぁ、こういうことか!と、 ヒザを打ちたくなる瞬間もあって、言語化することがすべてではないし、 そうすることで失ってしまうものもあるけど、やはり読書とはタイミング。 ものづくりのようなことをやっていると、そのエゴの極みのような 行為にうんざりしてしまうこともあるのですが、わたしのカバンにも いまだ読めぬ航海指令書が入っているのをなぜだか知っているので、それに 書かれているであろう、宇宙の神秘の一端に触れることができるかもしれぬ 途方もない一瞬のために、今日もただ手を動かすしかないのかもしれません。 ちなみにホロンとは、ギリシャ語で「全体」を意味する holos に 添字 on を付けたもので、on は proton(陽子)、neutron(中性子)のように 粒子または「部分」を暗示する、ケストラーによる造語です。 以下、本書最後の一節をご紹介します。 これを読んでピーンときた方は、ホロン革命、オススメします。 ::: 〜高次のリアリティからの信号〜 わたしはこの本を、ある種の信条で締めくくりたいと思う。 発端は40年以上前のスペイン市民戦争までさかのぼる。 1937年、わたしは死刑執行に怯えながら、スパイ容疑者としてセヴィルに あるナショナリストの刑務所で数ヶ月を過ごした。その間、独房のなかで、 わたしはある種の体験をした。それは神秘主義者が言う「大洋の感覚」に 近いものであった。わたしはそれを自叙伝的な話のなかで説明しようとした。 そしてそれを「窓ぎわの時間」と読んだ。説明はいくぶん散漫だが、まさに 以下の文は「不可知論者の信条」を反映している。 「窓ぎわの時間」によって、わたしは高次のリアリティが存在し、それが 存在に意味を与えているという確信でいっぱいになった。後にわたしはそれを 「第三次のリアリティ」と呼ぶようになった。感覚的に認識される狭い世界が 第一次を構成していた。そしてこの知覚的な世界は、原子、電磁場、湾曲した空間 など、我々には直接知覚しえない現象を包含する概念的世界でつつまれていた。 この第二次のリアリティは、つぎはぎの感覚的世界のギャップを埋め、それに 意味を与えていた。 同様に、第三次のリアリティは第二次のリアリティを包み、中に浸透し、それに 意味を与えていた。第三次のリアリティには感覚のレベルでも、あるいは概念の レベルでも説明のつかない、それでいて、原始人の考えていた丸天井の天空を 一気に貫いて入ってくる霊的な流れ星のように、時折、そうしたレベルに侵入する 「オカルト」現象が含まれていた。概念のレベルが感覚のレベルの幻想と歪みを あばきだしたように、「第三次のリアリティ」は、あの時間、空間、因果性の 正体をあばきだした。自己の孤立、分離、時間的空間的制約は、ひとつ上の レベルの幻想に過ぎなかったのである。第一次の種類の幻想を真に受けたら、 太陽は毎晩海に溺れ、目の中のホコリは月より大きくなる。同様に、概念的世界を 究極のリアリティと錯覚したら、世界は同じくらい馬鹿げたものになる。 皮膚で磁力を感じることができないように、究極のリアリティを言語的に理解 することは、望むべくもないのだ。それは目に見えぬインキで書かれたテキスト だったのである。 わたしは、この例えをあれこれいじりまわすのが好きだった。船長がポケットに 封印された航海指令書を入れて海に出る。その指令書は、公海に出て初めて開く ことが許されている。彼は不安が解消されるその瞬間を待つ。しかしその時がきて、 封を開けてみると、そこには目に見えない指令文しか入っていない。 どんな化学処理をほどこしても見えるようにならない。が、時折、単語が見えるようになったり、子午線を示す数字が見えたりする。しかし、また消えてしまう。 船長には指令文が正確に読み取れない。指令文に従ってきたのか、任務を失敗したの かもわからない。しかし、ポケットに指令書を持っているという意識があるため、 それを解読できないにもかかわらず、船長の考えと行動は、遊覧船や海賊船の船長の それと違う。 また、こんなふうに考えるのも好きだった。宗教の創始者、予言者、聖人、占師たちは時折、目に見えないテキストを一部分読むことができた。しかし、その後、彼らは あちこち文を付け足し、脚色し、飾り立てたから、もはや、彼ら自身にもどの部分が 本当なのかわからなくなってしまった。 - ホロン革命 / アーサー・ケストラー
by cotomono
| 2016-06-05 16:43
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