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熊本の灯

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熊本を襲った大きな地震から2週間と少しが経ち、ようやくここに何かを書く気が
湧いてきました。2回目の本震は福岡もだいぶ揺れたとはいえ、日々の生活が失われ
るようなことは何もないのに、自分の大好きな人や場所が傷付くのはこんなにも辛い
ことなのだなと思い知らされる日々でした。

かといって支援らしきものは何もできず、地震からしばらくはひとりでいると
どうにも苦しかったのですが、そんな時は近しい仲間や友人たちと小さな音楽や
たわいもないおしゃべりを介して、同じ思いを共にすることができて本当に
助けられました。


そして今日ようやく、展示会でもお世話になっているorange・橙書店の久子さんと
電話でお話しができて、久子さんの声を聞いているうちに自分の心を縛ってたものが
急にほどけてしまい、励ますつもりが最後はこちらが泣いてしまいました。。

お店の状況について、わたしがここに書けることではありませんが、
気骨ある文化の源泉ともいえる熊本の街にとって、そして小さな声しか持つすべ
のない無数の名もなき者たちにとって、あの場所は、かけがえのない灯であり、
そして、その灯とおなじ光や温もりが自らの中にもあることに気づいたとき、
たとえ暗闇のなかにあっても、その灯で再び、自分の中にある光に灯を点す
勇気が湧いてくるような、そんな場所なのです。


うえの写真は、そんな場所で生まれた熊本の雑誌『アルテリ』

2月に川内倫子さんの写真展でorangeに行ったとき、まだ本屋さんに並ぶ前の
出来立てホヤホヤの『アルテリ』を久子さんに見せてもらったのですが、
子どものように嬉しそうにアルテリのことを話す、その時の久子さんの笑顔が
ほんとうにキラキラしていて、こっちまで嬉しくなりました。その時にちょうど
この雑誌の影の立役者?である作家の渡辺京二さんもいらしていて、
特別にサインもしていただいたという、ちょっと自慢の一冊です。。。

読んですぐ、大事な友達にも読んで欲しくて貸していたのですが、
地震のあと、どうしても手元に置いておきたくて一旦返してもらいました。。

石牟礼道子さん、渡辺京二さん、伊藤比呂美さん、坂口恭平さんなど、
作家陣が本当に素晴らしいのですが、長らく石牟礼さんの番記者をされていた
という浪床敬子さんの「石牟礼道子の歌」は、いつか『苦海浄土』を読める日が
わたしにもくるだろうか、、と胸に響くものがあり、石牟礼さんを知らない人にも
読んで欲しいなと思いました。

そして、久子さんが書かれた「弱者の文学」は、ここに全文を書き写したいくらい
何度も読み返しているのですが、5年前、初めて橙書店(orange)を訪れた時に、
ここで展示会をさせてもらいたいと強く感じた、自らを救うことで他者をも救うこと
のできる、誰のものでもないけど、誰のものでもある「勇気」のようなものを、
「弱者の文学」を読んだ後に、またもらった気がしました。

熊本の灯に、励まされる日々です。
by cotomono | 2016-05-01 21:38
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